こんにちは!佳琳です。
2020年9月19日にHSKK(HSK口語試験)の中級を受験しました。
HSK(漢語水平考試)は、中国政府が中国語能力を認定する資格で、その中でもHSKK(漢語水平口語考試)はスピーキング能力を測る試験です。中国留学や中国企業に就職する際は、HSKやHSKKの成績が求められることが多いです。
日本の外国語試験でスピーキング能力が問われることは少ないので、口語試験に苦手意識を持っている方もいるかもしれません。しかし、HSKKに関しては出題のパターンは大まかに決まっているので、きちんと対策をすれば合格に近づくことができます。
今回は、実際にHSKK中級を受けて分かった試験の流れ、出題例などの受験レポや試験対策についてご紹介します。
試験概要
HSKK(漢語水平口語考試)は受験生の会話能力を判定するテストです。中級では、中国語を母語とする人たちと中国語で流暢に会話できる水準が求められます。
週に2~3時間の中国語学習を2年程度行った学習者に適した水準なので、大学の第二言語として中国語を1~2年間学習した人が想定されます。900語前後の一般常用語彙及びそれに相応する文法知識が求められます。
HSK公式サイトにおいて、年間日程の確認や受験申込みができます。各級の紹介やレベルをチェックするサンプルテストも掲載されています。
HSKの筆記試験は全国の各都市で毎月開催されますが、口頭試験の実施会場は限られています。2~3か月に1回のペースで、 東京・愛知・大阪・福岡など大都市の会場で実施されます。
中国留学の入試や奨学金の申請にHSKKの成績提出が要求される場合があります。例えば、孔子学院奨学金留学プログラムの申請資格にHSKK(中級)60点以上という条件があります。私も今後、中国の大学院に留学することを見据えて、HSKKを受験しました。
ここからは、HSKK(中級)試験の流れや出題内容について、実際に私が受験した感想を交えながら紹介していきます。
HSKKは、原則HSK筆記試験と同日に開催されます。筆記試験は午前に2,4,6級、午後に1,3,5級を実施するので、HSKKは全ての筆記試験が終了した17時に始まります。
HSKKの最大の特徴は、試験会場で放送される指示内容や問題を聞きとってICレコーダーに解答を吹き込む録音形式で行われる点です。
他の語学試験のような、試験官と受験生が一対一で対話する面接形式ではありません。しかも、大勢の受験生が1つの部屋に入れられて、各自配られたICレコーダーに解答を吹き込みます。
私が受験した時は、同じ会場に総勢26名が集められており、机上に1人1個ずつICレコーダーが配布されていました。会場で放送される問題や指示内容に合わせて、一斉に解答を録音するので、他の受験生の声が丸聞こえになります。語学力はもちろん、冷静に出題内容を聞き取り雑音に惑わされず解答に徹する集中力が必要だと感じました。
試験の流れ
会場に入ると、各受験生の座席机上に試験に使う用具一式が置いてあります。
配布物
- HSKK進行手順についての説明資料
- ICレコーダー
- HSKK信息卡(氏名・受験番号等を記入する名札)
試験開始まで進行手順の説明資料を読み込んで、静かに待ちます。
試験開始時刻である17時を過ぎると、会場の放送音量の調整、ICレコーダーの動作確認、信息卡の記入、試験問題冊子の配布などを行います。
このパートは試験監督の指示どおり行えば、問題ありません。日本語で説明されるので、戸惑うこともないはずです。
ここまでの作業でおよそ25分かかります。
試験が始まり、音楽が流れ終わると、以下の3つの質問が流れます。
質問
- 你叫什么名字?(Nǐ jiào shénme míngzi?)あなたの名前は何ですか?
- 你是哪国人?(Nǐ shì nǎ guórén?)どこの国の人ですか?
- 我的序号是〜〜(Nǐ de xùhào shì duōshao?)受験番号は何ですか?
各質問が放送された後に、名前、国籍、序号(いわゆる受験番号)を解答します。解答時間は各10秒で、採点には関係ありません。
回答例
- 我叫〜〜。(Wǒ jiào 〜〜)
- 我是日本人。(Wǒ shì rìběn rén)
- 我的序号是〜〜。(Wǒ de xùhào shì 〜〜)
このパートが終わると、いよいよ試験問題の解答に移ります。3つのパートに分かれており、各問題は1回しか放送されません。
パート | 形式 | 問題内容 | 問題数 | 時間 |
第一部分 | 復唱 | 放送を聴いてその文章を復唱する | 10題 | 5分 |
(準備時間) | (第二部分、第三部分に対する回答の準備) | 10分 | ||
第二部分 | 絵を見て話す | 問題冊子にある1枚の絵を見ながら、それについて話す | 2題 | 4分 |
第三部分 | 読み取り | 問題冊子に書かれた2つの質問(ピンイン付記)に対して解答する | 2題 | 4分 |
試験問題全体の所要時間は約23分です。なお、ICレコーダーは試験開始から終了の合図があるまで常に録音し続けます。
各パートの出題内容の詳細は下記の通りです。
第一部分「听后重复」
始めに以下の音声が流れます。
音声
「好,现在开始第1到10题,每题你会听到一个句子,请在“滴”声后重复这个句子。现在开始第一题。」
Hǎo, xiànzài kāishǐ dì yī dào shí tí, měi tí nǐ huì tīng dào yíge jùzi, qǐng zài “dī” shēng hòu chóngfù zhège jùzi. Xiànzài kāishǐ dì yī tí.
(今から第1から10問を始めます。各問題で一つずつ文章が流れるので、ブザー音の後に復唱してください。では、第1問を開始します。
その後、中国語の短文が1文ずつ放送されます。各問題の文章を聞き取り、「ポーン」という音の後に、そのまま復唱します。
回答時間は各問10秒ずつで、全部で10題あります。出題される文章は、10字程度の短文で、下記のイメージです。
出題例
- 熊猫是我最喜欢的动物。(Xióngmāo shì wǒ zuì xǐhuān de dòngwù)パンダは私が一番好きな動物です。
- 我不知道今天开会(Wǒ bù zhīdào jīntiān kāihuì)私は今日会議があることを知りませんでした。
- 飞机马上起飞了。(Fēijī mǎshàng qǐfēile)飛行機はもうすぐ離陸します。
- 我每天早上都吃一片面包。(Wǒ měitiān zǎoshang dōu chī yīpiàn miànbāo)私は毎朝パンを1個食べます。
HSK4級程度のリスニング力があれば問題ありません。聞いているうちに問題文を忘れてしまうという人は、手元の問題冊子の余白にメモを取ることも可能です。
但し、全員一斉に解答を始めるので、他の受験生の声が嫌でも耳に入り、だいぶ気が散ります。集中力を切らさずに、しっかり回答しましょう。
第一部分は聞いた放送内容を一字一句そのまま復唱すればOKなので、回答に頭を使う第二部分・第三部分に比べると易しいです。ノーミスで満点を取れればベストです!
第二・第三部分の準備時間
第一部分が終わると、以下の音声が流れます。
音声
「好,现在开始准备第11到14题,可以在试卷上写提纲。准备时间为10分钟。」
Hǎo, xiànzài kāishǐ zhǔnbèi dì shíyī dào shísì tí, kěyǐ zài shìjuàn shàng xiě tígāng. Zhǔnbèi shíjiān wèi shí fēnzhōng.
(今から第11から14問の解答準備を始めてください。試験用紙に概要を書いても構いません。準備時間は10分間です。)
配布されている冊子に第二・第三部分の問題(第11~14問の計4問)が記載されています。10分間でこれらの問題の解答準備を行います。
問題冊子の余白を使って解答内容を練ることができます。しかし、1問あたりの準備時間は単純計算で2分半と限られるので、読み原稿の形にまとめるのは難しいです。各問について発言の論理構成と要点になるキーワードをメモしておくのがベターです。
第二部分「看图说话」
第二部分は、絵を見て話す「看图说话」の問題が計2問あります。(第11〜12問)
回答時間は各2分です。
準備時間が終わると、以下の音声が流れます。
音声
「准备时间结束。现在开始回答第11题。」
Zhǔnbèi shíjiān jiéshù. Xiànzài kāishǐ huídá dì shíyī tí.
(準備時間を終了します。今から第11問を解答してください。)
第11問の回答をICレコーダーに録音します。2分経過後、続いて以下の音声が流れます。
音声
「第11题结束。现在开始回答第12题。」
Dì shíyī tí jiéshù. Xiànzài kāishǐ huídá dì shí'èr tí.
(第11問は終わりです。第12問を解答してください。)
第11問と同じ要領で、第12問を解答します。
問題冊子に写真が2枚載っているので、写真のシーン、風景、人物の様子からテーマを自由に想像して説明する問題です。
HSK5級の書写(作文)パートで、写真を見て自由に作文する問題がありますが、それと同じ要領で口頭で解答する形です。
写真のイメージは下記のとおりです。基本的には人物写真です。
私は冊子の余白に簡単なメモを取っておき、それを見ながら解答しましたが、思ったより早く終わり時間が余ってしまいました。そこで、話しながら思いついた内容を後から付け足しました。
私が受験した時は、制限時間2分間のうち1分を過ぎたあたりで大半の受験生が解答し終わっていました。
静まり返った会場で自分だけ話し続けるのは精神的にきついので、解答の分量やペース配分に注意してください。
第三部分「回答问题」
第三部分は、問題冊子に書かれた質問に答える「回答问题」の問題が計2問あります。(第13〜14問)
回答時間は各2分です。
第二部分の回答が終わると、以下の音声が流れます。
音声
「第12题结束。现在开始回答第13题。」
Dì shí'èr tí jiéshù. Xiànzài kāishǐ huídá dì shísān tí.
(第12問は終わりです。第13問を解答してください。)
第13問の回答をICレコーダーに録音します。2分経過後、続いて以下の音声が流れます。
音声
「第13题结束。现在开始回答第14题。」
Dì shísān tí jiéshù. Xiànzài kāishǐ huídá dì shísì tí.
(第13問は終わりです。第14問を解答してください。)
第13問と同じ要領で、第14問を回答します。
私が受験した時は、以下の2問が出題されました。
出題例
- あなたが最も楽しいと思う旅行はどんなものか?
- あなたが人生で重要な決断をする場面で、家族や友人があなたの選択内容に反対したならば、あなたはどう対処するか?
質問自体は、生活に身近で具体的なトピックなので、日本語でも解答内容が思いつかないという事態は起こりにくいです。
第二部分と同様に、各問題で制限時間の半分が経過したあたりで、ほとんどの受験生が録音を終えていました。
解答の準備時間が限られているので、難しい表現を多用すると文法誤りや発音ミスを招き、減点対象となってしまいます。
覚えている範囲の語彙を使って短い文をたくさん作り、自分の意見を確実に述べると高得点が狙えます。
試験対策
HSKK(中級)は100点満点で評価され、6割(60点)以上のスコアを取得すると合格となります。
私が調べた範囲では、日本語でHSKK対策を解説した参考書はありませんでした。
中国語で書かれたHSKK対策テキストであれば、インターネットやフリマアプリで購入できます。
試験対策としては、HSKKの過去問を解くのがベストです。
過去問に勝る対策はありません。試験問題の傾向を掴むためにも、直近数年分の過去問を解くことをお勧めします。
中国の友人・知人をつくり、日頃から中国語を使う機会を増やすことも試験対策に有効です。
中国人とWeChat(中国版LINE)を交換して交流を深めると、中国語のリスニング・ライティング・スピーキングの実地トレーニングになります。
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日本人の中国語学習者の中にも、WeChatのアカウントをお持ちの方は多くいらっしゃると思います。中国の方は基本的に全員WeChatのアカウントを持っているので、コミュニケーションに利用しない手はありません。
スピーキング対策には、中国人の友達と通話するのがベストです。但し、通話はスピーキング能力とともにネイティブスピードのリスニング力も問われるので、自信がない・ハードルが高いという方もいるかもしれません。その場合は、ボイスメッセージ機能が便利です。
例えば、ボイスメッセージ機能を活用して、中国の友人に気軽に発音チェックや添削をお願いできます。HSKKの過去問を解く際、解答内容を録音して相手に送信します。スマホさえあればいつでもどこでもボイスメッセージを再生できるので、相手も負担なく添削や発音の修正することができます。
中国は日本に比べて、ボイスメッセージ機能を利用する頻度が非常に高いです。実際、中国人とWeChatしていると、文章のチャットよりボイスメッセージが送られてくることの方が圧倒的に多いです。相手のボイスメッセージを聞くことで、ネイティブスピードの発音に触れることができます。しかもボイスメッセージは何度も再生できるので、一度で聞き取れなかった場合には何度でも確認できます。
さらに、WeChatには、ボイスメッセージで録音した中国語音声をその場で文字起こしできる機能があります。送られてきたボイスメッセージでどうしても分からない部分があれば、文字で確認できます。自分が吹き込んだ音声が、アプリ上できちんと中国語の文章に変換されるかどうかで、発音のチェックにもなります。
中国人に倣って、日頃からボイスメッセージ機能を使ってネイティブと中国語会話をすることがHSKK対策になります。
終わりに
今回は、HSKK口頭試験(中級)の概要と、実施の流れ、試験対策についてご紹介しました。
スピーキング試験は、やはりネイティブとコミュニケーションすることが一番の対策になります。
この記事を読まれた皆様が、HSKK試験を突破できるよう願っています!