こんにちは!佳琳です。
2020年8月16日に実施された全国通訳案内士試験の第一次試験(筆記)を受検しました。
試験科目の中でも「一般常識」に一番手こずったので、「一般常識」試験で頻出のテーマ3つをまとめました。
今後、全国通訳案内士試験を受ける方は、試験直前のおさらいとして必見です!
試験概要
通訳案内士は、訪日外国人旅行者を観光地へ案内したり、旅行のサポートを行って報酬を得る職業で、年に一回、日本政府観光局(JNTO)が試験を実施します。
英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、タイ語の10言語が対象で、筆記試験(第1次)と口述試験(第2次)で構成されます。
第一次試験は毎年8月中旬実施で、「外国語」「日本地理」「日本歴史」「一般常識」「通訳案内の実務」の5科目が出題されます。筆記試験で全科目に合格すると第二次試験を受験することができます。
第二次試験は毎年12月上旬実施で、筆記試験で選択した言語による口述試験を行います。通訳案内の現場で必要とされる外国語コミュニケーションの実践能力について判定し、この口述試験を突破して最終合格となります。
詳しい試験科目は、日本政府観光局の「全国通訳案内士ガイドライン」を参照してください。
全国通訳案内士試験は語学分野で唯一の国家資格ですが、外国語能力だけではなく日本地理・歴史など、幅広い分野の知識も求められます。そのため毎年の最終合格率は10%前後(2019年度は8.5%)と大変低く、難関資格の一つです。
対策が困難な「一般常識」
私は今回初めて通訳案内士試験に出願しました。中国語を選択したところ、私はHSK6級を取得していたため、筆記試験のうち外国語の試験が免除されました。残りの筆記試験4科目について対策を進めています。
私個人の体感としては、「日本地理」「日本歴史」は高校までの社会科の知識である程度対応できるので過去問対策で事足りる、「通訳案内の実務」は試験範囲が限られているので対策テキストを読み込めば十分合格可能という印象です。
ところが「一般常識」は、出題内容が多岐にわたり対策が困難です。最新の時事ネタはもちろん、日本の観光動向、鉄道、スポーツ、歌舞伎や相撲などの日本の伝統文化、流行している映画など、本当に幅広い分野が出題されます。
「一般常識」は50点満点で合格基準は30点(60%)ですが、過去問や模擬試験を解いて得点が半分にも満たないことがしばしばあり、私にとっては筆記試験で一番の課題になる科目です。おそらく他の多くの受験生も同じ悩みを抱えているのではないでしょうか?
ただ、過去問数年分を解いていくうちに、的が絞りにくい「一般常識」科目の中でも、毎年のように出題される定番トピックがあることに気付きました。そこで自分自身の試験対策の意味を込めて、今回の記事でまとめます。
「一般常識」の出題内容
全国通訳案内士試験における「一般常識」科目の正式名称は「産業・経済・政治及び文化に関する一般常識」です。日本政府観光局から、次のとおり出題範囲が示されています。
- 現代の日本の産業、経済、政治及び文化についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む。)のうち、外国人観光旅客の関心の強いものについての基礎的な知識を問うものとする。
- 試験の方式は、多肢選択式(マークシート方式)とする。
- 問題の数は、40問程度とする。※平成30年度以降は、20問程度とする。
- 内容は、最新の「観光白書」や新聞(一般紙)に掲載された時事問題をベースに出題する。
大きく「観光白書」と「時事問題」の2つの分野から出題されるということが分かります。
「時事問題」はその年の情勢によって内容が大きく変わるので、毎年出題されるトピックはないようです。日頃から国内外のニュースにアンテナを張って最新動向を把握するのが一番の試験対策で、公務員試験などの時事問題テキストを読み込めば更なる対策になります。
一方、「観光白書」は毎年必ず試験問題で取り上げられます。「観光白書」は、観光庁が観光の状況及び政府が観光に関して講じた施策を取りまとめた資料です。毎年6月頃に発表され、国土交通省のホームページで公開されているので、最新の「観光白書」を読み込むのが「一般常識」突破の近道と言えます。
観光白書は冊子としても出版されており、全体版で200ページ超、概要版でも60ページ程度あります。全部読み込むと時間がかかりますが、出題されるテーマは決まっています。最新の令和2年度版観光白書などから、試験で出題の多い分野3つについて情報をまとめました。
頻出テーマ三選
近年の通訳案内士試験では、「観光の統計」「国立公園・世界遺産などの観光資源」「スポーツ」の3つが多く取り上げられています。それぞれのテーマについて、主要な情報をご紹介します。
観光の統計
大きく訪日外国人旅行者の動向と日本人旅行者の動向の2つに分けられます。それぞれについて最新のデータをまとめました。
訪日外国人旅行者数
引用:令和2年度観光白書
2019年に日本人を訪れた外国人旅行者の数は3188万人(前年比2.2%増)と、7年連続で過去最高を更新しました。
現在、国を挙げて訪日インバウンド政策を行っていますが、2003年の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」がその始まりと言われています。具体的な施策としては、観光ビザ発給要件の緩和、消費税免税制度の拡充、国内インフラの整備、多言語表記・wi-fi・キャッシュレス対応などに取組んでいます。
2020年までに訪日外国旅行者数4000万人達成を目指していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大により目標達成の見通しは立っていません。
訪日外国人旅行者の内訳
引用:令和2年度観光白書(概要)
2019年訪日外国人旅行者の国別データです。1位の中国959万人は前年比14.5%増と二桁の伸び率を記録した一方、2位の韓国558万人は日韓関係の冷えこみにより前年比25.9%減となりました。3位は台湾489万人、4位は香港229万人、5位はアメリカ172万人です。
アジアからの訪日外国人は2637万人で、全体の82.7%を占めています。欧米豪についても、2018 年から実施してきた旅行先としての日本の認知を広げるための「グローバルキャンペーン」やラグビーワールドカップ 2019 日本大会を受けて、前年より訪日者数が拡大しました。特に北米からの訪日外国人旅行者数は 210 万人で、初めて 200 万人を突破しました。
訪日外国人旅行者の消費動向
引用:令和2年度観光白書(概要)
訪日外国人旅行消費額は2012年以降急速に拡大し、2019年はは4兆 8135 億円(前年比 6.5%増)となりました。国別消費額では、中国が1兆7704億円で全体の4割近く占め、台湾、韓国、香港、アメリカと続きます。これら上位5ヶ国・地域で総額の 71.1%を占めました。
2019年の一人当たりの旅行支出は158,531 円(前年比 3.6%増)でした。この背景として、1人当たり旅行支出が比較的高い傾向にある中国や欧米豪の訪日外国人旅行者数が堅調に伸びたことがあげられます。特に、欧米豪を中心としたラグビーワールドカップ 2019 日本大会を観戦した訪日外国人旅行者の平均泊数が他の旅行者よりも長く、宿泊費や飲食費を中心に一人一泊当たりの単価が高かったことから全体の単価を押し上げました。
2019年の訪日外国人旅行消費額構成比は下記のとおりです。
1位 | 買物代 | 1兆6690億円(34.7%) |
2位 | 宿泊費 | 1兆4132億円(29.4%) |
3位 | 飲食費 | 1兆397億円(21.6%) |
4位 | 交通費 | 4986億円(10.4%) |
5位 | 娯楽・サービス費 | 1908億円(4.0%) |
出国日本人数
引用:令和2年度観光白書(概要)
2019 年の出国日本人数は、過去最高の 2008 万人(前年比 5.9%増)となり、初めて 2000 万人を突破しました。
訪日外国人旅行者数と比較すると、2014年以来、5年連続で訪日外国人数が出国日本人数を上回っています。日本人出国者の訪問先としては、2018 年のデータで1位が米国、2位が韓国、3位が中国でした。
国立公園・世界遺産などの観光資源
国立公園
国立公園とは環境大臣が指定し国によって直接管理されている公園で、日本の代表的な風光明媚な自然で世界にも誇れる傑出した風景が指定の要件になっています。人々が自然に親しめるように、利用施設が整えられています。区域内では自然環境保護のため、開発行為は制限されています。
日本全国に34の国立公園があり、そのうち世界遺産地域を含むものは7つあります。
自然遺産 | 屋久島、知床、小笠原 |
文化遺産 | 瀬戸内海(嚴島神社)、日光(日光の社寺)、吉野熊野(紀伊山地の霊場と参詣道)、富士箱根伊豆(富士山) |
環境省のホームページに一覧が掲載されています。
世界遺産
世界遺産とは、顕著な普遍的価値(人類全体にとって特に重要な価値)を有し、将来にわたり保全すべき遺産として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に登録されたものです。世界遺産には「自然遺産」と「文化遺産」、両方の価値を兼ね備えている「複合遺産」があります。
2019年7月現在、日本は合計23の世界遺産を有し、自然遺産は4つ、文化遺産は19あります。
直近で世界遺産に記載されたのは、2019年登録の「百舌鳥・古市古墳群」(大阪府堺市)です。
日本を代表する古墳群で、かつては100基以上あったといわれますが、現在は44基が残っています。主な古墳は仁徳天皇陵と伝えられる大仙古墳で、全長486メートル、高さ34メートルと日本最大級の前方後円墳です。
外務省のホームページに日本国内の世界遺産一覧が掲載されています。
世界農業遺産
国連食糧農業機関(FAO)が世界的に重要で伝統的な農林水産業システムであると認定した地域です。 2020年8月現在、世界で22ヶ国62地域、日本では11地域が認定されています。
農林水産省のホームページに一覧が掲載されています。
日本遺産
日本遺産とは、有形・無形の区別なく地域色の魅力にあふれた多様な文化財で、文化庁が認定します。地域に根付いて継承されている伝承や風習を踏まえるストーリー性を持つもので、地域の良さをアピールするテーマが据えられた上で、地域の建造物、遺跡、祭り、文化財が含められていることが認定の条件になっています。
日本遺産ポータルサイトに一覧が掲載されています。
無形文化遺産
無形文化遺産とは、世界遺産と同じく国連教育科学文化機関(ユネスコ)によって認定されますが、無形物が対象となっています。その国の歴史や文化と密な関係を持って発展してきた伝統的な芸能や、踊り、祭り、工芸技術、食文化などがあります。
2018年11月現在、日本では「能楽」「人形浄瑠璃」「歌舞伎」「アイヌ古式舞踊」「結城紬」「和食:日本人の伝統的な食文化」「和紙:日本の手漉和紙技術」など22の無形文化遺産が登録されています。
文化庁のホームページに一覧が掲載されています。
スポーツ
近年の通訳案内士試験では、ラグビーワールドカップ2019日本大会、東京2020オリンピックなどスポーツ関連分野からの出題が多くなっています。
私個人の考えですが、東京2020オリンピックは新型コロナウイルス感染症拡大により開催延期になったので、2020年の通訳案内士試験では出題されないのではないかと思います。そこで、2019年成功裏に終了したラグビーワールドカップ2019日本大会について概要をまとめました。
ラグビーワールドカップ2019日本大会の概要
引用:令和2年度観光白書(概要)
引用:令和2年度観光白書(概要)
ラグビーワールドカップは4年に一度開催される世界三大スポーツイベントの一つで、2019年の日本大会はアジアで初めての開催になりました。2019 年9月から 11 月にかけて開催され、期間中に国内外から 170.4万人の観客を動員しました。
大会開催の効果もあり、2019 年9~10 月の大会出場国からの訪日外国人旅行者数は前年同期に比べ 17 万 4 千人増加し、伸び率では 29.4%の増加となりました。
観戦した訪日外国人旅行者の 一人一回当たりの旅行支出をみると、38.5 万円/人となり、観戦していない旅行者(15.9 万円/人)の 2.4 倍と大きく上回りました。主な国籍別でみると、英国 38 万 6 千円、フランス47 万 6 千円、米国 32 万 8 千円、オーストラリア 40 万 8 千円となり、いずれの国籍においても観戦していない同じ国籍の旅行者よりも高い消費額となりました。
ラグビーを観戦した旅行者は観戦していない旅行者に比べ、スポーツ観戦費のほか、宿泊費、飲食費、酒類の買物代が高い傾向がありました。また、観戦した旅行者の平均泊数は 13.3 泊と、観戦していない旅行者(8.2 泊)に比べ5泊以上長く滞在しています。
日本チームの戦績としては、今大会で初めて決勝トーナメントに進出しましたが、南アフリカに敗れベスト8になりました。優勝も南アフリカが決め、2位イングランド、3位ニュージーランドとなりました。
終わりに
出題範囲が広いとされる通訳案内士試験の「一般常識」科目ですが、今回ご紹介した頻出分野3つの知識を押さえれば、合格に一歩近づけます。
この記事を読まれた皆様が、通訳案内士の筆記試験を突破できるよう願っています!